パーティーグッズ研究所

2017/12/20(修正), 2017/1/20 by Cuban

Pioneer CDJ-2000 修理レポート

CDJ-2000は2009年に発売されたパイオニアのDJ向けマルチプレーヤーです.調子の悪いCDJの修理依頼を引き受けてきたのでついでに修理レポートを作成することにしました.修理内容として以下3点の症状の改善を行います.なお,この記事を参考にして自分で修理されるのであれば,自己責任で作業を行ってください.

修理したCDJ-2000

▲ 修理したCDJ-2000,サービスモードでLEDの点灯を確認している様子

筐体を分解する

筐体を分解するためには背面のネジ2個と底面のネジ5個を取り外します.このとき背面と底面とでネジの形が似ていますが,種類が違うことに注意が必要です.

背面ネジ位置底面ネジ位置

▲ 取り外すネジの位置(赤矢印)

ネジを取り外したら足を掴んで持ち上げ,以下写真の様に正面から見て左に配置します(フラットケーブルの長さ的に一方にしか開けないため).フラットケーブルを傷めないように慎重に作業します.筐体内にホコリが溜まっていれば随時エアダスターなどで掃除します.

筐体を開いた状態

▲ 筐体を開いた状態,右が操作パネル側,左が底面側

CUEボタンを修理する

CUEボタンは他のボタンよりも押される回数が多い上に,強い力で連打したりする人も居るので一番故障しやすいボタンです.馬鹿力で押すとすぐに壊れます.また,タクタイルスイッチは機械的な接点を持ったスイッチなので当然寿命が来ます.製品や押す力によって変わりますが,数万~100万回ぐらいが寿命です.基本的に故障・寿命のスイッチは交換が必要になります.

スイッチを交換するために基板を取り外します.CUE,PLAY/PAUSEボタンが付いている基板は,開いた筐体の操作パネル側の一番右下にあります.ネジ4個と上側の基板に挿されたケーブルを外して基板を取り出します.コネクタからケーブルを取り外す際に,以下写真の赤矢印の部分を引き上げてからケーブルを抜き取ります.

CUE,PLAY/PAUSEボタン基板ケーブルとコネクタ

▲ CUE,PLAY/PAUSEボタン基板とケーブルの抜き取り方

基板が取り外せたら故障したスイッチを取り外します.ハンダ吸い取り線などを使ってハンダを除去し,基板とリード線との引っ掛かりをペンチで整えてスイッチを抜き取ります.

CUE,PLAY/PAUSEボタン基板 表面取り外したタクタイルスイッチ

▲ 取り外した基板表面とタクタイルスイッチ

次に,新しいスイッチを取り付けます.CUE,PLAY/PAUSEボタンに使用されているタクタイルスイッチのサービスマニュアル上の型番は"DSG1117-A"ですが,代替が効くのでそちらを使用します.代替スイッチの仕様としては,5mm間隔の2Pラジアルリードで,ステム高さが4.3mm,移動量0.3mm程度ならば代用できます.例えばアルプス電気"SKRGAAD010"なんかが代用できます.

スイッチを取り付ける際の注意点として,スイッチと基板との間に隙間を作らないようにします.隙間があるとボタンを押したときの圧力がリード線を介して基板の銅箔パターンへ掛かり,パターンを剥離させ接触不良を起こすことがあります.隙間が無ければ圧力はスイッチの底面から基板表面へ掛かるのでパターン剥離の心配はありません.隙間を作らないようにスイッチを実装するには,例えばまずスイッチを通常通りハンダ付けし,指でスイッチ上面を軽く押さえながら再度ハンダごてをランドに当ててスイッチと基板を密着させる方法が考えられます.

ちなみに,CDJ-2000に実装されている押しスイッチは全共通の部品ではありません.例えばJOG MODE,TEMPO,MASTER TEMPOボタンはステムが上のより少し高めのラジアルタイプのタクタイルスイッチ(型番"VSG1204"),LINK,USBやBROWSE,TAG LISTなどの画面周りのスイッチには表面実装タイプのタクタイルスイッチ(型番"DSG1134-A")が使用されています.

JOG ADJUSTを修理する

JOG ADJUSTを回したときのクリック感が弱いorジョグを操作するとHEAVY側からLIGHT側へ勝手に戻るという症状は,つまみの位置を保持するための"つっかかり"がヘタって機能していないのが原因です.修理に交換部品は不要ですが,この"つっかかり"機構のヘタりを熱で変形,修復するためにヒートガン(またはドライヤー等)とピンセットを使用します.

まず,操作パネル側からジョグユニットを取り外します.JOG ADJUSTをあらかじめLIGHT側に回してからつまみを引き抜き,以下写真に示すネジ6本とケーブルを取り外して手前に引っ張り出すようにしてジョグユニットを抜き取ります.ジョグを抜き取る際に,周りの基板とジョグユニットを干渉させないよう注意します(この作業が慣れるまで難しい).無理やり引き抜こうとすると周りの基板を損傷させる可能性があります.

ジョグユニットの取り外し方

▲ ジョグユニットの取り外し方(赤矢印が取り外すネジ)

JOG ADJUST機構を覆うカバーを取り外します.以下写真に示すようにジョグユニット裏面にあるカバーのネジ4本を取り外します.カバーを取り外す際に内部の歯車・ラックのかみ合いがズレないように注意してください.かみ合いがズレるとJOG ADJUSTつまみの回転位置やジョグの制動の具合が変化します.

JOG ADJUST機構のカバーネジ位置JOG ADJUST機構内部

▲ JOG ADJUST機構のカバーネジ位置(赤矢印)と取り外した状態

(※写真の歯車・ラックの位置はJOG ADJUSTが中央にある状態での位置,JOG ADJUSTがLIGHT側ならラックが右側に来る)

機構内部写真左上にある花びら型の部品を取り出します.後で同じかみ合い位置に取り付けるために,取り出す前に花びら型の部品と隣の歯車に位置関係がわかるような印をマーカーで付けることをオススメします.

"つっかかり"部分の修復を行います.花びら型部品の隣,ジョグユニットのフレームの角に,中央がかまぼこの形をした板バネのような構造があります(以下写真参考).このかまぼこ部分と花びら部分がかみ合うことによってJOG ADJUSTつまみの位置が保持され,回したときにクリック感が生まれます.修復するためには,ヒートガンやドライヤー等で板バネ状の部分を温め,ピンセットで湾曲を取り除きます.交換が効かない箇所なので作業は慎重に行います.特に温めすぎに注意します.(少し温めただけでもかまぼこ部分の自重で変形する)

つっかかり部分のヘタりつっかかり部分を修復した状態

▲ "つっかかり"部分がヘタっている様子と修復した状態

湾曲を修復後,花びら型の部品を元のかみ合い位置で戻しカバーを取り付けて完了します.

修理内容と関係はありませんが,以下の写真に示す八角形の部品の取り付け位置を回すことによって,つまみをHEAVY側にした状態でのジョグの制動の効き具合を調整することができます.ジョグの制動をより効かせたい場合,八角形部品のネジを外して+側に回転させネジを締めます.この作業だけを行うならば,ジョグが操作パネルに付いている状態でも変更できます.

ジョグ制動調整部(標準)ジョグ制動調整部(+1)

▲ ジョグ制動の最大を調整する

ジョグを修理する

押してないのにジョグが反応するという症状は,ジョグの上にモノを置いたまま保管したり,本体を逆さにして放置したりすると生じます.ジョグが押されているかの判断は,ジョグ内部の圧力センサによって判断されています.押されていない状態ではジョグは圧縮バネによってセンサから少し浮いた状態になり,圧力センサは検知しません.このバネがヘタっているとジョグの自重で圧力センサが検知してしまい,結果として触ってないのにジョグが反応することになります.実のところ,今回修理したCDJ-2000にはこの症状は無かったのですが,普段使用によるバネの劣化があるのでついでに修復を行いました.

まず,ジョグユニットからジョグ外枠とプラッターを取り外します.ジョグ外枠はフレームから出ている3つのツメによって保持されており,そのうち2つのツメ(以下写真赤矢印)を指で曲げてジョグ外枠を浮かせることにより取り外すことができます.もう1つのツメは固定されていて指で曲げることができません.外枠を外したら,プラッターは上に乗っているだけなので外します.

ツメ位置

▲ 指で曲げるツメの位置(赤矢印)

ジョグの外枠,プラッターが外せたら圧力を伝達するローラーを外します.以下写真青矢印のネジ3つを緩めるとローラーが外せます.ネジがある場所の,ローラーの下にバネが隠れているので無くさないように取り出します.ちなみに,中央にあるのは蛍光表示管(VFD)で,表面はガラス板,内部は真空になっているので扱いに注意します.

ローラーネジ位置

▲ 圧力伝達ローラーのネジ位置(青矢印)

取り出したバネを手で引き延ばします.自然長が大体15~16mmになれば良いようです.手で引き延ばしてバネに永久ひずみを与えるのは応急処置的な方法なので,新品のバネに交換するのであれば,外形6.8mm,内径6.2mm,線径0.3mm,自然長15mmの圧縮コイルばねを使用します.

引き延ばす前のバネ引き延ばした後のバネ

▲ 引き延ばす前,引き延ばした後のバネ

バネを修復,交換したら元の位置に戻して組み立て直し,作業を完了します.以下写真は本工程で分解作業したときの部品を並べたものです.

ジョグ分解写真

▲ ジョグを分解した様子

動作確認をする

ボタンの反応,LEDの点灯等はサービスモードで検証することができます.CDJ-2000では,TEMPOボタンとMEMORYボタンを同時に押した状態で電源を投入するとサービスモードで起動します.起動後にTAG LISTボタンを押すと,ボタンの動作やエンコーダ,フェーダー,ジョグの位置などを表示する画面へ移行します.ボタンを押すと画面上に押されているボタンの名称が表示され,ボタンにLEDがついているものはその場所のLEDが点灯します.また,DELETEボタンを押すとLEDが全点灯します.

サービスモードで起動した様子CUEボタン点灯の様子

▲ サービスモードで動作を確認している様子

ちなみに,TAG TRACK/REMOVEボタンを数回押すと液晶画面にカラーバーを表示させたりできます.ほかにもVINYL SPEED ADJUSTの上側のつまみを一番右に回すと,ジョグの制動を評価するモードになります.このモードは,複数台のCDJ-2000の制動を評価して調整したりする場合に活用できます.このモードでジョグを思い切り回すと,その時のTOP SPEEDとTIMEを計測することができます.TOP SPEEDには,1.8秒あたりに1回転する速さを1としたときの倍数が表示され,TIMEにはその速さが3から1.5に変化するまでの時間をミリ秒で表示します.

ジョグ制動の評価モード

▲ ジョグの制動を評価するモード

最後に

パイオニア製のプロオーディオ機器を分解したのは初めてでしたが,プロ仕様なだけあって分解しやすいと感じました.普段から分解修理とかしてる人ならすぐに治せると思います.しかし油断してると関係ないところを壊す可能性もあるので,注意深く作業したほうが良いでしょう.

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